絵本塾出版会長・編集者の尾下千秋氏より毎月届く「絵本テキスト創作塾通信(抜粋)」をご紹介します。
No.1<2023年5月27日発行>
◇絵本創作カレッジ
3つのイベントを開催
・絵本テキスト創作塾
・絵本テキストグランプリ
・創作絵本コンクール
この三つのイベントを開催しています。今後の発展のため児文芸と連携しました。個人で対応の弱点を、カバーするためです。
この創作塾もその一つです。それまでの6回は肥糺氏と尾下が担当しました。その差は歴然です。希望者が多く皆さんは抽選で選ばれた方々です。
【書 評】
◇こころんけいが
わらったら◆
絵本塾出版発行
文・絵;たて ゆうみ
「うるさーい!」
「かいじゅうに なって まちじゅう めしゃくちゃにしたい」
主人公「そうたくん」は、むかむかする気持ちを抑えられない様子だ。
みいちゃんが遊んでいた積み木もこわしちゃうし、そうたくんが大事にしていたものも取っちゃう。そうたっくんの迷惑行為は、やむ気配がない。とうとうみんなに怒られた。
「もう 一緒に あそんであげないからね!」
「べつに いいよ。ぼく ひとりが いいんだもん!」
子どもたちの世界は、正直で容赦ない。
「そうたくん」と「みんな」は、どこの保育園や幼稚園にでもいるはずだ。
どこにもないのは、『こころんけい』だ。
体温計に似ているが、「気持ちがはかれます」という。
「いま どんな きもちかな?」
自分の感情、まして他人の感情を推しはかることは、幼児には難しい。幼児期である今こそ、子ども同士で遊ぶことを通して、他者の存在や違う視点があることに気づいていく。だから「ひとり」でいてはだめなのだ。
保育園にも先生がいる。先生がいて、怪獣の迷惑行為や仲間外れを、見守り良い方向へ導いてくれるはずだ。作者たてゆうみ氏は、自身が保育士であるために、あえて口出しをせず、子どもの気づきを大切にする物語を書いた。
家庭においても両親と弟の家族があり、自身が愛されて誕生し、育てられてきたことに気づいていく。
『こころけい』をどう使うか? サインと色遣いで、自分の本当の気持ちをはかろう。
この自己肯定の物語は、読んでもらった子どもたちだけでなく、思春期の青少年も大人も、自分事として振り返りながら、社会の中で生きる力を与えてくれている。
読書活動研究家;笠井 るな